相続等の登記を、横浜市戸塚区で1日150件、泉区で1日50件、栄区で1日150件の申請を処理していた実務経験者
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横浜、戸塚、栄、泉、瀬谷、旭、港南、南区の相続手続きはもちろんのこと、民事信託、離婚、自筆証書遺言書保管の作成支援。自筆証書遺言の検認手続、成年後見、公正証書遺言の作成手続、家事事件の申立書作成、遺言執行者の指定についても当事務所は受任できますので、実務経験豊かな横浜、戸塚駅から徒歩2分の司法書士・行政書士高田秀子事務所までご連絡願います。
1 単独申請を可能とすることとした理由
不登法では、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならないとされていますが(不登法60条)、現行不登法 63条は、その例外として、確定判決による登記や相続・法人の合併による権利の移転の登記につき、登記権利者の単独申請によることを認めています。
もっとも、ここでいう「相続」には、いわゆる特定財産承継遺言(民法 1014条 2 項参照)が含まれるものの、遺贈は含まれず、他に別段の定めもないため、遺贈による所有権の移転の登記は、登記権利者である受遺者と登記義務者である遣言執行者(又は共同相続人)との共同申請によらなければならない(注 1) 。
(注1) 従来は、遺贈といわゆる特定財産承継逍言(遺産分割方法の指定と解釈される相続させる旨の遺言)との間の実務上の差異として、このような①不動産登記の単独申請の可否のほか 、②登録免許税の多寡 、③農地法 (昭和27年法律第229号)3 条の許可の要否、④賃借権の承継における賃貸人の承諾の要否(前者については必要、後者については不要)、⑤推定相続人の廃除の規定の適用の有無(前者については適用なし、後者については適用あり)等があるといわれていた。もっとも、現在では、②や③の場面では法律の改正によって差がなくなっており(登録免許税法17条 1 項、農地法 3 条 1 項16号、農地法施行規則(昭和 27年農林省令第 79号)15条 5 号参照)、両者の実際上の差異はより小さくなっていると指摘されています。
不登法において、このような共同申請の原則が採用されているのは、登記権利者だけでなく登記をすることにより登記上直接に不利益を受ける登記義 務者が共同して登記を申請していることをもって、登記の真正を担保するための措置の一つとして位置付けていることによるものです。
しかし、相続人に対する遺贈は、遣言の内容に基づいて被相続人から相続人に対して権利の移転が生ずるという点では特定財産承継遺言と同様の機能を有するものであり、特定財産承継遣言に基づいて相続による所有権の移転 の登記の申請がされる場合と同様に登記原因証明情報として遺言書が提供されるのであれば、遺贈による所有権の移転の登記の真正は特定財産承継遺言に基づく相続による所有権の移転の登記と同程度に担保されるということができます。
加えて、一部改正法では、遺贈により所有権を取得した相続人に対して所有権の移転の登記の申請義務が課されているところ、その申請を促進し、所有者不明不動産が発生することを予防する観点からは、その登記手続の合理化・簡略化を図ることが有益であると考えられます。
以上を踏まえ、相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記(注2) についても、登記権利者(受遺者)による単独申請が可能とされたものです(注3) 。
(注 2) 相続人以外の第三者に対する遺贈については、これを相続(特定財産承継遺言)による所有権の移転と実質的に同視することができないことから、新不登法63条 3 項の規定の適用対象外とされており、従前と同様の手続によることになります。
(注3) 新不登法63条 3 項では、相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記については、登記権利者による単独申請が可能とされていますが、登記権利者と登記義務者の共同申請によってすることが排除されているわけではありません。
(出典:Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法)
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司法書士 戸塚・栄・泉区
相続の放棄をした者による相続財産の管理制度が改正になりました。
Q 相続の放棄をした者による相続財産の管理に関して、どのような改正をしているのでしょうか(新民法940条 1 項関係)。
1 問題の所在
現行民法においては、相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始める,ことができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないとされています(現行民法940条 1 項)。
この管理継続義務は、次順位の相続人が相続財産の管理を始めることができるまでの管理についてのものである。 そのため、法定相続人の全員が相続しない場合に、誰が管理継続義務を負うの放棄をし、次順位の相続人が存在かは、必ずしも明らかではない。 また、相続の放棄をした者が相続財産を現に占有していない場合にまで管理継続義務を負うかどうかや、その義務の内容及び終期も明らかではないため、相続の放棄をしたにもかかわらず、過剰な負担を強いられるケースがあるとの指摘があります。
2 改正内容
新民法940 条1 項では、相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は新民法952条 1 項の相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるとの同一の注意をもって、その財産を保存しなければならないものとされました。
これにより、①相続の放棄をした者が同項の義務を負うのは、放棄の申述時に相続財産に属する財産を現に占有している場合に限られ、被相続人の占有を観念的にのみ承継している場合には、同項の義務を負わないこと、②同項の義務の内容は、現に占有している財産の保存にとどまり、それを超えた管理義務を負うわけではないこと、③同項の義務は、相続人や新民法952条1 項の相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すことによって終了することが明確にされました。(by:Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法)
平成20年に父甲の遺産について、相続人である母乙、子A、B間で遺産分割協議が行われ、
不動産については母乙が持分100分の99、子Aが100分の1を相続することに決定しました。
しかし、遺産分割協議書は原本ではなく、印鑑証明書の添付もありませんし、かつ、コピーしかありません。
相続登記をしないうちに、母乙が平成26年に死亡しました。
母乙の持分100分の99で相続した不動産について、子A、B間で遺産分割協議を行なった結果、子Aが、
持分100分の99を相続することになりました。
この相続登記申請はどのようにしたらよいのでしょうか?
という案件にぶつかるときがあります。
司法書士は、相続税の計算はできませんが、登録免許税の計算はできます。依頼者のために
登録免許税をできるだけ安くしてあげることに、苦心した結果、父からの第一次相続人が母乙単独で
取得しているのであれば、権利変動の過程が比較的明らかであって、登記原因の記載も複雑となる
おそれはないので、第二次相続人が仮に2人の共有であったとしても、1件の登記申請が可能であると
いう結論に達します。登記原因としては、『平成20年 月 日乙相続、平成26年 月 日相続』
という数次相続について、1件の申請による登記をすることが認められるのです(昭和30年12
月16日民甲第2670号民事局長通達)。
現在では、
登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。 相続登記の登録免許税の免税措置については、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載してください(記載がない場合は、免税措置は受けられません。)。
ところで、相続税に関しては税理士にお願いをするわけですが、司法書士として、平成20年父甲
死亡時に行われた有効な遺産分割協議書(例えば、相続の申告をしたが、相続登記はしなかった場合)
が存在していても、その遺産分割協議書がコピーの場合には、登記に使用できないことになります。
しかしながら、そのコピーが残っている場合、相続の確定申告をしていることが考えられることから、
その分割協議の結果をないがしろにすることはできません。
登記では使用できない遺産分割協議書をどのような法的効果を持たせて、登記申請ができるかですが、
平成20年の遺産分割協議書を現在の相続人全員が実印、印鑑証明書を添付して証明する方法があります。
そこで、登記手続き上、有効になった平成20年の遺産分割協議書と今般の平成26年の協議書で
1件の登記申請(数次相続)をすれば、登記免許税が軽減されることになります。
ただし、司法書士として、気をつけなければならないのは、父の相続に際して、母乙が相続登記をし
ていれば、相続税が発生しなかったのではないかと考えられることです。
司法書士は、税の専門家でないので、登録免許税の軽減ばかりに注意を喚起し、父甲の相続登記を
今般の平成26年の遺産分割協議書と平成20年の遺産分割協議書の双方を添付して、最終相続人
子Aが単独で相続するという1件の登記申請をした場合、税務署が相続税をどのように掛けてくるか、
税理士に相談された方がよいと思われる事案です。
登録免許税を節約したところ、相続税の方が高くなってしまったのでは本末転倒です。
亡母乙名義に一度相続登記を入れて、相続税を回避するという手法を取る場合があります。
税理士に計算を行ってもらって、1件の登記申請でも課税されないようであれば、遺産分割協議書は、
平成20年の内容を現在の相続人で証明し、今般の平成26年の遺産分割協議書(協議者は同一相続人)
を双方添付して、数次相続の登記申請をする方法が考えられます。
戸塚区の相続登記は、ベテランの当事務所にお越しいただきますと、懇切丁寧にご説明申し上げます。
取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会
〔照会〕
照会の内容 | 事前照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容) | 別紙の1のとおり |
---|---|---|
事前照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等) | 別紙の2のとおり | |
の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由 | 別紙の3のとおり | |
関係する法令条項等 |
租税特別措置法第35条 信託法第183条 |
|
添付書類 |
〔回答〕
回答年月日 | 令和4年12月20日 | 回答者 | 東京国税局審理課長 |
---|
回答内容 |
標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。 記
(理由) |
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(参考 国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/01.htm#a01)
遺言執行者とは?
遺言執行者(遺言執行人)とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。
遺言執行者の任務は、「法務局での名義変更手続き」や「相続財産を調査して目録を作る」といった、遺言の内容を実現するための一連の作業になります。遺言の内容を実現するための権限を持ち、実際に行動する人が遺言執行者ということです。
民法(2019年7月1日施行前の相続法改正)は以下のとおり、規定しています。
(遺言執行者の任務の開始及び権利義務)
第1007条第2項
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされ(法第1012条第1項)、遺言執行者の職務は遺言の内容を実現することにあり、必ずしも相続人の利益のために職務を行うものではないことが明確化された。
また、遺言執行者がある場合は、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるとされ(同条第2項)、遺言執行者の権利義務が明確化された。
この改正後の規定は、改正法の施行の日(令和元年7月1日)前に開始した相続に関し、同日以後に遺言執行者となる者にも適用するとされた(改正法附則第8条第1項)。
( 遺言の執行の妨害行為の禁止)
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができないとされているところ(法第1013条第1項)、法第1013条第1項の規程に違反してした行為は、無効になることを明確にしつつ、ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができないとして(同条第2項)、善意者保護規定を設けている。
また、これらの規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げないとされ(同条第3項)、相続債権者を含む相続人の債権者については、その適用がないことが明確化された。この相続債権者等による相続財産についての権利行使としては、相続債権者等による差押え等の強制執行等が該当する。
この改正後の規定は、改正法の施行の日(令和元年7月1日)以後に開始した相続について適用され、同日前に開始した相続については、なお従前の例によるとされた(改正法附則第2条)。
(特定財産に関する遺言の執行)
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が法第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるとされた(法第1014条第2項)。
また、法第1014条第2項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従うとされた(同条第4項)。
なお、遺言執行者は、一般に、法定代理人であると解されており、これは、改正前後で異なることはない。
これにより、不動産を目的とする特定財産承継遺言がされた場合に、遺言執行者は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときを除き、単独で、法定代理人として、相続による権利の移転の登記を申請することができることとなる。
おって、相続人が対抗要件を備えることは、遺言の執行の妨害行為(法第1013条第1項)に該当しないため、当該相続人が単独で、相続による権利の移転の登記を申請することができることは、従前のとおりである。
この改正後の規定は、改正法の施行の日(令和元年7月1日)前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については、適用しないとされた(改正法附則第8条第2項)。
(特定財産に関する遺言の執行)
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(改正前の民法)
第4節 遺言の執行
(遺言書の検認)
第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)
第1005条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
(遺言執行者の指定)
第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
(遺言執行者に対する就職の催告)
第1008条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
(遺言執行者の欠格事由)
第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の選任)
第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(相続財産の目録の作成)
第1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第1012条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 前3条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
(遺言執行者の地位)
第1015条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
(遺言執行者の復任権)
第1016条 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 遺言執行者が前項ただし書の規定により第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第105条に規定する責任を負う。
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第1017条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(遺言執行者の報酬)
第1018条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第648条第2項及び第3項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
(遺言執行者の解任及び辞任)
第1019条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
(以上改正前の民法)
(解説)
改正法の附則第8条により、以下のように定められている。
(遺言執行者の権利義務等に関する経過措置)
第8条 新民法第1007条第2項及び第1012条の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に遺言執行者となる者にも、適用する。
2 新民法第1014条第2項から第4項までの規定は、施行日前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については、適用しない。
3 施行日前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、新民法第1016条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
このように遺言執行者を遺言書の中で指定しておくと(特に公正証書遺言)、遺言内容が執行されるために非常に便利となります。
遺言執行者には相続人の1人を指定してもよいことになりますが(遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定(第1006条))、一般的に遺言執行者には、弁護士や司法書士が指定されることが多いことは紛争が生じないように法的な判断ができる法的専門家が要望されているからです。
また、登記手続きを伴う不動産の遺贈の登記をするためには、通常は法定相続人全員の印鑑及び印鑑証明書が必要ですが、司法書士を遺言執行者に指定しておくと、遺言執行者の印鑑と印鑑証明書で登記手続きができることになり、いたずらに、遺言に不服のある法定相続人の捺印、印鑑証明書を求める必要がなくなります。
(遺言執行者の地位)として、民法は、遺言執行者は、相続人の代理人とみなす(第1015条 )と規定していましたが、
(遺言執行者の行為の効果)
第1015条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。と、改正されました。
しかし、金融機関、法務局などの対応において、自筆遺言の場合、必ずしもその地位を認めてくれない場合があります。そこで、やはり、公正証書遺言の作成を薦めるゆえんでもありますし、専門家にご依頼をされることをお薦めするゆえんでもあります。
そうでなければ、遺言を書いたと安心していたとしても、改めて相続人の委任状等を要求する場合がありますので、気をつけましょう。
➀ 共有者の一人が死亡し、その相続人のあることが明かでないときは、その死亡者の共有持分は「相続財産」という法人名義となります(民951条)。この場合には、その相続財産の管理人が選任され(民952条1項 )、 家庭裁判所はその選任公告をします(同条2項)。一方、管理人の申立てにより債権者と受遺者に対する権利請求の申出(民957条)、相続人捜索の公告(民958条)がなされても、その公告期間 (6か月を下らない期間)以内に権利主張者のないときは、相続人不存在が確定します(民958条の2) 。 また、上記の公告期間満了により相続人の不存在が確定し、かつ、民法958条の3第2項の3か月の期間以内に特別縁故者からの財産分与の申立てがなかったとき(又はその申立てを却下する旨の審判が確定したとき)の他の共有者への権利の帰属時期は、申立ての期間の満了日(又は申立てを却下する旨の審判が確定した日)の翌日とし、登記原因は「特別縁故者不存在確定」とするものとされ、その日付は、被相続人の死亡の日から 13か月の期間の経過後の日であることを要する取扱いであり、これに違背する申請は、改正前不動産登記法49条 4 号(現行不登法25条 5 号)により却下すべきものとされています(平成3·4·12民三2398通達)。
② 登記の目的として、移転する相続財産全部、すなわち死亡した共有者の相続財産共有持分全部の移転(民255条)の登記である旨を記載します(不登令3条5号)。
③ 登記原因としては、前記➀に示したように「何年何月何日特別縁故者不存在確定」と記載しますが、その日付は、民法958条の3第2項の期間満了日の翌日又は上記の期間内に同条1項の請求があり、かつ、分与しない旨の審判が確定した日の翌日を記載します。
④ 登記権利者として、相続財産を取得した他の共有者の氏名・住所及び各取得者の持分を記載します。
⑤ 登記義務者は、法人「亡甲相続財産」です。
⑥ 登記原因証明情報としては、上記③の各種書面を添付します。
⑦ 登記義務者の登記識別情報(又は登記済証)は、「亡甲」(被相続人)が所有権を取得したときの登記識別情報(又は登記済証)を提供します。なお、登記識別情報(又は登記済証)を提供することができないときは、その理由を記載します。この場合は、不動産登記法第23条第1項、第2項により登記官の事前通知による本人確認か、同条第4項により資格者代理人(不登規72条)による本人確認情報⑪を提供すべきものとされています。 ⑧ 登記義務者「亡甲相続財産」の法定代理人である相続財産管理人の印鑑証明書を添付します。
⑨ 登記権利者の住所を証する住民票の写しなどを添付します。 ⑩ 登記義務者の法定代理人であることを証する相続財産管理人の選任審判書を添付します。なお、法定代理人たる管理人から復代理人による申請の場合は、さらに復代理の委任状を添付します。
<参考:「相続における戸籍の味方と登記手続」高妻新・荒木文明著>
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1.自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等について
(法務省ホームページ>引用http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html
<法務省ホームページ>より引用>http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
(1) 遺産分割に関する見直し
ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲 共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができることが明確化された(法第906条の2第1項)。 法第906条の2第1項の規程にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しないとされた(同条第2項)。
この改正後の規定は、改正法の施行の日(令和元年7月1日)以後に開始した相続について適用され、同日前に開始した相続については、なお従前の例によるとされた(改正法附則第2条)。
個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは,平成30年4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については,登録免許税を課さないこととされました。
免税を受けることができる相続登記の申請のイメージは,以下のとおりです。 登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得した場合において,その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなったときは,相続人Bをその土地の登記名義人とするための相続登記については,登録免許税が免税となります。
(注)上記のような場合に,必ずしもCさんがその土地を相続している必要はなく,例えばBさんが生前にその土地を第三者に売却していたとしても,1次相続についての相続登記の登録免許税は免税となります。
本来,土地の価額に対して0.4%(1000分の4)の税率がかかるところ,平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間は,免税となります。
登録免許税の免税措置の適用を受けるためには,免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。 相続登記の登録免許税の免税措置については,「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載してください(記載がない場合は,免税措置は受けられません。)。
(by 法務省HP http://homu/page7_000017.html)
平成30年12月20日 法務省民事局総務課
平成30年7月6日,法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)が成立しました(同年7月13日公布)。法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」といいます。)は,高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み,相続をめぐる紛争を防止するという観点から,法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けるものです。遺言書保管法の施行期日は,施行期日を定める政令において平成32年7月10日(金)と定められました。なお,施行前には,法務局に対して遺言書の保管を申請することはできませんので,ご注意ください。
○ 遺言書の保管の申請
• 保管の申請の対象となるのは,民法第968条の自筆証書によってした遺言(自筆証書遺言)に係る遺言書のみです(第1条)。また,遺言書は,封のされていない法務省令で定める様式(別途定める予定です。)に従って作成されたものでなければなりません(第4条第2項)。
• 遺言書の保管に関する事務は,法務局のうち法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)において,遺言書保管官として指定された法務事務官が取り扱います(第2条,第3条)。
• 遺言書の保管の申請は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対してすることができます(第4条第3項)。
• 遺言書の保管の申請は,遺言者が遺言書保管所に自ら出頭して行わなければなりません。その際,遺言書保管官は,申請人が本人であるかどうかの確認をします(第4条第6項,第5条)。
○ 遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理 • 保管の申請がされた遺言書については,遺言書保管官が,遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言書に係る情報を管理することとなります(第6条第1項,第7条第1項)。
○ 遺言者による遺言書の閲覧,保管の申請の撤回
• 遺言者は,保管されている遺言書について,その閲覧を請求することができ,また,遺言書の保管の申請を撤回することができます(第6条,第8条)。保管の申請が撤回されると,遺言書保管官は,遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します(第8条第4項)。
• 遺言者の生存中は,遺言者以外の方は,遺言書の閲覧等を行うことはできません。
○ 遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等 • 特定の死亡している者について,自己(請求者)が相続人,受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます(第10条)。
• 遺言者の相続人,受遺者等は,遺言者の死亡後,遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます(第9条)。
• 遺言書保管官は,遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは,速やかに,当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人,受遺者及び遺言執行者に通知します(第9条第5項)。
○ 遺言書の検認の適用除外
• 遺言書保管所に保管されている遺言書については, 遺言書の検認(民法第1004条第1項)の規定は,適用されません(第11条)。
○ 手数料
• 遺言書の保管の申請,遺言書の閲覧請求,遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求をするには,手数料を納める必要があります。(第12条)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
民事信託と遺留分
東京地裁平成30年9月12日判決が出ました。「遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであって、公序良俗に反して無効というべきである。」という判決です。信託と遺留分についての下級裁判例ですが、契約書を作成、締結する場合は、当然に検討を要する判決です。
横浜 戸塚 栄 泉 瀬谷 旭 港南 南区の相続手続きはもちろんのこと、生前贈与、民事信託、成年後見、公正証書遺言の作成手続、遺言執行者の指定についても当事務所は受任できますので、実務経験豊かな横浜 戸塚駅から徒歩2分の司法書士・行政書士高田秀子事務所までご連絡願います。
〔平成30年3月31日付法務省民二第168号〕 法務省民事局民事第二課長
所得税法等の一部を改正する法律(平成30年法律第7号。以下「改正法J という。)が本年4月1日から施行され,改正法により新設される租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「法」という。)第84条の2の3第1項の規定も同日から施行されますが,これに伴う不動産登記事務の取扱いについては,下記の事項に留意するよう,貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
記
第 1 背景
相続登記が未了のまま放置されることは,いわゆる所有者不明土地問題を生じさせる大きな要因の一つであるとされ,法務省では,相続登記を促す広報用リ-フレットの作成や法定相続情報証明制度の創設など,相続登記の促進のための各種の施策を進めているところである 。
一方で,相続登記が未了のまま放置されることの理由の一つとしては,手続にかかる費用の負担が挙げられており,例えば登録免許税の減免措置といった費用負担の軽減を図るべきとの指摘もある 。
法務省では,これらの状況に鑑み,平成30年度税制改正要望として,相続登記を促進するために,相続登記に係る登録免許税について特例措置を設けることを要望してきたところである 。 この要望については,平成29年12月22日に閣議決定された平成30年度税制改正の大綱に「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」として盛り込まれ,今般の免税措置の創設に至ったものである 。
第 2 相続に係る所有権の移転登記の免税措置(法第84条の2の3第1項関係)
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下同じ。)により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは,平成30年4月1日から平成33年3月31日までの聞に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については,登録免許税を課さないこととされた(法第84条の2の3第1項)。
今回の措置は,いわゆる数次相続が生じていることを主に想定したものであるが,ここでいう「個人が相続により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したとき」とは,登記名義人である被相続人 A から相続人 B が 相続により土地の所有権を取得した場合において,相続人 B が被相続人 A からの相続による土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときをいう。 したがって,当該土地の所有権が相続人 B の死亡による相続を原因として B の相続人(例えば B の子など)に更に移転していることまでを要件とするものではない。すなわち,例えば,当該土地について相続人 B が生存 している聞に相続人 B から第三者に売買等がされていたとしても,それをもって法第84条の2の3第1項の適用外となるものではない 。
「当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」とは,死亡した相続人 B を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける,被相続人 A からの相続による土地の所有権の移転の登記をいう。 また,例えば,相続人 B に,存命する同順位の相続人が存在し,当該土地が当該同順位の相続人と相続人 B との共有により相続されている場合には,「 当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」として法第84条の2の3第1項の適用により免税措置を受ける範囲は,相続人 B が所有権の移転を受ける持分に相当する部分となる。
法第84条の2の3第1項の適用を受けようとするときの申請情報の記載は,例えば,登録免許税の欄に「租税特別措置法(又は昭和32年法律第26号)第84条の2の3第1項により非課税(あるいは,一部非課税)」などとする。
上記3に従って法第84条の2の3第1項の適用を受けようとする土地の相続による所有権の移転の登記の申請があった場合には,同項の適用の有無は,原則として,当該申請において提供される,相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報 ( 不動産登記令(平成16年政令第379号)別表22の項添付情報欄)から明らかとなるため,法第84条の2の3第1項の適用を受けるための特段の証明書類は要しない。
Q 父の相続に際し、公正証書遺言がありました。その内容は「妻に全財産を相続させる。」とありました。相続人は、母と、私(長男)と妹です。
母は、父が母に相続するという、土地について、長男の私にその相続する土地をあげると言っています。母は、健在なので、父の相続のときに私に相続させるということができないか、ご相談に参りました。
A 父の遺言があっても、共同相続人全員の同意があれば、遺言の内容と異なる遺産分割協議はできます。相続登記が未了のときは、当該遺産分割協議によって、直接「相続」を原因とする所有権移転登記ができます。既に、遺言によって、相続の登記がなされているときは、当該遺産分割協議によって、「遺産分割」を原因とする持分移転登記を行う方法があります。
なお、当事務所では、後々の紛争を回避するために、公正証書遺言の内容を全員が承知したうえで、その遺言と違う内容での遺産分割協議を行った方法をとらさせていただいています。
(参照:「登記官からみた相続登記のポイント」新日本法規)
相続・遺言と祭祀承継
遺言で先祖のこと、お墓の維持管理や法要、お寺のこと等を長男に託したいのだけど、本当に実行してくれるか心配だ!という声が相続や遺言のお話のときに、あちこちで聞かれます。
遺言にて『遺言者は遺言者及び祖先の祭祀を主催すべき者として長男○○○○(昭和○○年○月○日生)を指定する。』と記載することで、遺言者は一応安心すると言われていますが、先のような事例があることは遺言の限界と言えます。
そこで、死後事務委任契約とか、遺言信託をご教示する場合があります。
この遺言信託は、金融機関の商品名で周知されているかと思いますが、金融機関における「遺言信託」(注)は、民事信託・家族信託でいう「信託」ではありません。
私たち法律家がお話をする「遺言信託」は、信託法第3条2号に規定されている民事信託でいう「信託」です。
この「遺言による信託」は、例えば、お父さんが「私が亡くなったら息子を受託者として私の所有する不動産を信託する」と遺言で定めておく方法で、お父さんが亡くなった時に信託の効力が発生します。
この「遺言による信託」は公正証書で遺言を作成すると同時に作成します。
(注)【信託銀行の提供するサービス】
多くの信託銀行は、遺言に関する以下のサービスを有料で提供しています。名称に信託という文言が含まれていますが、法的には信託とは無関係です。
①遺言の作成に関するコンサルティング
②作成した遺言書を保管
③遺言の執行
横浜、戸塚、栄、泉、瀬谷、旭、港南、南区の相続手続きはもちろんのこと、民事信託に強い司法書士です。公正証書遺言の作成手続、信託契約書作成、離婚、自筆証書遺言の検認手続、成年後見、家事事件の申立書作成、遺言執行者の指定についても当事務所は受任できますので、実務経験豊かな横浜、戸塚駅から徒歩2分の司法書士・行政書士高田秀子事務所までご連絡願います。
Q 不在者の財産管理人が選任されており、財産管理人が土地の買収に応ずるために民法103条に定めた権限を超える行為につき家庭裁判所の許可を得ている場合において、買収を登記原因とする所有権移転の登記申請書にその許可書(審判書)を添付しているときでも、登記済証の添付を要するか。
A 登記済証添付の要否(登研366号)⇒変更
不在者の財産管理人が、土地の買収に応ずるために民法103条に定めた権限を超える行為につき家庭裁判所の許可を得ている場合において、買収を登記原因とする所有権移転の登記申請書にその許可書(審判書)を添付しているときでも、法35条1項3号に規定する登記義務者の権利に関する登記済証の添付を要する。
Q 不在者の財産管理人が土地の買収に応ずるために民法(明治29年法律第89号)第103条に定める権限を超える行為につき家庭裁判所の許可を得ている場合において、買収を登記原因とする所有権の移転の登記の申請に当該許可書を添付しているときは、不動産登記法(平成16年法律第123号)第22条に規定する登記識別情報の提供をすることを要しないと考えますが、いかがでしょうか(質疑応答【5499】(登研366号85頁)では、このようなときであっても、登記済証の提供を要する旨の回答がされています。)。
A 登記識別情報の提供の要否(登研779号)
不在者の財産管理人が土地の買収に応ずるために民法第103条に定める権限を超える行為につき家庭裁判所の許可を得ている場合において、買収を登記原因とする所有権の移転の登記の申請に当該許可書を添付しているときは、登記識別情報の提供を要しない。
御指摘の質疑応答は、本件質疑応答によって変更されたものと了知願います。
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【相談の内容】 【相談者】 父親Aとその妻B
【具体的な依頼内容・希望など】
①Aの死亡後、遺産が国庫に帰属することは避けたい。
②Aの財産は、妻Bと長女Cに使ってもらいたいが、最終的に長女Cに使ってもらうようにするにはどうしたらよいか。
「委託者」が所有している資産を受託者に移転して、「受託者」はその資産につき、一定の目的に従って管理処分を行い、その資産から生じた利益を「受益者」に配当するという契約です。委託者の財産の所有権は受託者に移りますが、その利益は受益者が受取るということになります。
2.唯一、民事信託のみが生前から死亡後まで永続的に設定できる契約です。(次号へ続く)
標記について,別紙甲号のとおり福岡法務局民事行政部長から当職宛てに照会があり,別紙乙号のとおり回答しましたので,この旨貴管下登記官に周知方お取り計らい願います 。 〔別紙甲号〕 数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが 記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記の可否について (照会) Aを所有権の登記名義人とする甲不動産について,別添の相続関係説明図記載のとおり遺産分割が未了のまま数次相続が発生したことを前提に,今般,E の相続人の一人であるG から,G が甲不動産を相続したことを内容とする遺産分割協議書を 登記原因証明情報のっとして添付した上で,「年月日 B 相続 , 年月日 E 相続 ,年月日相続」を登記原因とする G への所有権の移転の登記の申請( 以下「本件登記申請」という。)が 1件の申請でされました 。 単独相続が中聞において数次行われた場合には,相続を原因とする所有権の移転登記を1件の申請で行うことができ,この単独相続には遺産分割により単独相続になった場合も含まれることについては先例(昭和30年12月16日付け民事甲第2670号民事局長通達。以下「昭和30年通達」という。)において示されているところですが ,本件においては,第一次相続の相続人による遺産分割が未了のまま第二次相続及び第三次相続が発生し,その後の遺産分割協議が第一次相続及び第二次相続の各相続人の地位を承継した者並びに第三次相続の相続人によって行われたものであり,本遺産分割協議書には,A名義の不動産をGが単独で相続した旨の記載があるのみであることから,昭和30年通達の取扱いの対象となるかどうかが明らかではありません 。 本遺産分割協議書の当該記載の趣旨は,第一次相続から第三次相続までの相続関係から合理的に推認すれば,まず,①第一次相続の相続人の地位を承継した者(FからSまで)により亡Bに甲不動産を承継させる合意,次に,①亡Bを被相続人とする第二次相続の相続人(J,K及びL) 及び相続人の地位を承継した者( F , G , H 及び I )により亡Eに甲不動産を承継させる合意,そして,③亡Eを被相続人とする第三次相続の相続人( F , G , H 及び I ) によりG に甲不動産を承継させる合意の各合意をいずれも包含するものと解されますので,登記原因欄の上記記載は相当であると考えられます。また,上記各相続における相続人又は相続人の地位を承継した者である F から S までの全員の署名押印があり,第一次相続から第三次相続までの遺産分割協議をするためにそれぞれ必要な者によって遺産分割が行われたと考えられます 。そうすると,昭和30 年通達に従って,本件登記申請に係る登記をすることができると考えますが,いささか疑義がありますので照会します 。
〔別紙乙号〕 数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記の可否につ いて (回答) 本月2 8 日付け不登第64 号をもって照会のありました標記の件については,貴見のとおり取り扱われて差し支えありません。
上の図で、不動産を持っていた甲さんが亡くなりました。甲さんには長男A、二男B、長女Cがいます。遺産分割協議をしないうちに、続いて長男Aが亡くなりました。 長男Aには、妻D、子E、子F、子Gがいます。 Q1 甲さんの不動産を二男Bが相続する場合には、どのような遺産分割協議書を作成すればいいのでしょうか? A1 二男Bが相続する方法として、甲さんの相続と長男Aの相続の遺産分割協議を①1通の遺産分割協議書で作成する方法があります。 ①1通の遺産分割協議書で作成する方法 甲さんの相続人として、二男B、長女C、長男Aの相続人として、妻D、子E、子F、子Gが参加する遺産分割協議書で甲さんの不動産を二男Bに相続させる旨の遺産分割協議書を作成します。
また、上の図のように長男Aの相続人が全員二男Bへその相続分を譲渡したい場合はどうすればいいのでしょうか?次回へ続く。
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被相続人甲が死亡し乙、丙及び戊(丁の代襲相続人)が相続した甲名義の不動産につき、相続登記未了のうちに乙の死亡によりA、B、Cが、丙の死亡によりX(Dの代襲相続人)が相続し、さらにその後、戊、A及びXが各自の相続分をそれぞれBに2分の1、Cに2分の1ずつ譲渡した場合において、B及びC名義への移転登記をするには、
①相続を原因とする乙、丙及び戊名義への所有権移転の登記、
②乙持分について相続を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記(Aの印鑑証明書付相続分譲渡証書添付)、
③丙持分について相続を原因とするX名義への持分全部移転の登記、
④戊及びX持分について相続分の売買又は相続分の贈与等を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記を順次申請するのが相当である。
(平4.3.18、民三第1,404号民事局第三課長回答・先例集追Ⅷ268頁、登研536号155頁〔解説付〕、月報47巻5号90頁)
相続による権利の移転の登記等における添付書面の原本の還付を請求する場合において、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、登記原因証明情報のうち、戸籍謄本又は抄本及び除籍謄本に限り、当該相続関係説明図をこれらの書面の謄本として取り扱って差し支えない。 (平17.2.25、民二第457号民事局長通達・登研686号344頁)
【結論】同時に数個の相続登記を申請する場合、申請書に添付した相続関係説明図により相続関係が明らかであるときは、相続関係説明図を前件に添付し、他の申請書にはその旨を付記して援用してもよい。
Q 相続による所有権移転の登記を数個同時に申請する場合において、一の申請書に添付した相続関係説明図により数個の申請の相続関係が明らかであるときは、個々の申請書に相続関係説明図を添付することなく、最初の申請者に添付したものと援用することが許されると考えますがいかがでしょうか。
A 御意見のとおりと考えます。(登研250号)
【結論】甲から乙、乙から丙へと順次相続が行われている場合において、甲名義の不動産と乙名義の不動産について丙が相続登記を連件で申請するときに、甲名義の不動産についてする相続の登記申請書に添付した相続関係説明図を、乙名義の不動産についてする相続の登記申請書に援用することはできない。
Q 相続人甲はA物件を所有する、相続人乙はB物件を所有するというような遺産分割協議書による相続関係につき、A物件(甲所有)の相続登記(一)とB物件(乙所有)の相続登記(二)を連件で提出する場合、相続関係説明図は便宜(一)の登記の申請書にのみ添付して、(二)の登記の申請には前件添付とする取扱いで差し支えないものと考えますが、いかがでしょうか。
A 相続関係説明図は、相続を証する書面中、当該相続による登記をなすにつき必要な事項及び関係者等を限定的に図によって明らかにしたものでなければなりません。したがって、被相続人が異なる場合は「相続関係説明図」にある事項等が異なることとなり、その援用はできないものと考えます。(登研420号)
旧民法730条2項「養親が養家を去りたるときは其者及び其実方の血族と養子との親族関係は之に因りて止む」
「大正時代にとある家の養女になったAがその家の家督を継いだ後に、実の妹Xと養子縁組をした後、昭和14年の隠居・結婚に伴いAが養家を去った場合、AとXの養親子関係(ひいては相続関係)は消滅するのかどうか」が争われたものです。なお、Aの相続開始(死亡)は平成時代に入ってからであり、Aには実子Yが存在します。
現在の法律で単純に考えれば、AとXは離縁していないのだからAX間に親子関係は存在し、ひいては相続関係も存在するとなりそうです。ところが、Aの相続開始は平成に入ってからではあるものの、上記のAX間の親族関係が発生したのはいずれも戦前の旧民法の時代なので、AとXの親族関係(ひいては相続関係)を判断するには旧民法をも参照して判断しなければなりません。
そこで、旧民法ですが、次のような規定がありました。 旧民法730条2項(現代語訳) 「養親が養家を去りたるときは其者及び其実方の血族と養子との親族関係は之に因りて止む」
この条文を事案に合わせて読むと、「養親(A)が養家を去ったときは、養親(A)と養子(X)の親族関係(親子関係)は消滅する」というふうに読めそうです。 実際の裁判ではこのAX間の養親子としての相続関係の有無が争われたのですが、裁判所は、旧民法730条2項によりAとXの養親子関係は消滅したので、AX間に親子としての相続関係は存在しないと判断したようです。いわば条文どおりの判断です。
因みに、養子が養家を去ることを法律用語で「去家」といいますが、この「去家」という文言については、該当する事実があっても直接戸籍に「去家」と記載されたりはしません。そんなわけで、第1審、第2審の裁判では事案が旧民法730条2項の去家に該当するものであることが見過ごされたのではないか?と考えられます。
【最高裁平成21年12月4日第2小法廷判決・破棄自判判例タイムズ 1317-128】
Xは故A女の養子であると主張して、A女の実子であるYに対し、A女がその遺産の多くをYに相続させる内容の公正証書遺言をしたことにより、遺留分を侵害されたとして、価額弁償を求めた。
事情は以下の通りである。
①A女は大正6年9月17日、B男との間で同人を養親とする養子縁組をして、同人が戸主であるB家に入り、大正8年6月11日同人の死亡によりその家督を相続した。
②Xは、昭和14年8月30日、実姉であるA女との間で、同人を養親とする養子縁組をした。
③A女は、同年11月2日、隠居した上、同月29日、C男と婚姻してB家を去った。
④A女は、平成10年11月17日、長男であるYにその遺産の多くを相続させる内容の公正証書遺言をした。
⑤A女は、平成15年5月24日死亡した。
⑥Xは、平成16年5月13日、Yに対し、遺留分減殺の意思表示をした。
Xの請求は、認められるか?
【解答】 認められない。
(理由) 最高裁は、以下のように述べ、XがAの養子であるとする前提自体を否定し、Xの主張を退けた。 「昭和22年法律第222号による改正前の民法730条2項は、「養親カ養家ヲ去リタルトキハ其者・・・・ト養子トノ親族関係ハ之ニ因リテ止ム」と定めるところ、養親自身が婚姻又は養子縁組によってその家に入った者である場合に、その養親が養家を去ったときは、この規定の定める場合に該当すると解すべきである(最高裁昭和42年(オ)第203号同43年7月16日第三小法廷判決・裁判集民事91号721頁参照)。前記事実関係によれば、A女は、B男との養子縁組によりB家に入った者であって、被上告人Xと養子縁組をした後、C男と婚姻してB家を去ったというのであり、B女の去家により、同項に基づき、B女と被上告人Xとの養親子関係は消滅したものというべきである。」
自筆証書による遺言書の家庭裁判所の検認期日の審問調書に、相続人中の1人が「遺言書は遺言者の自筆によるものではなく、押印も遺言者の使用印によるものではないと思う。」旨の陳述をしたとの記載がある場合であっても、遺言内容による相続の登記の申請に異議がない旨の当該陳述者の証明書(印鑑証明書付)が申請書に添付されているときは、当該相続の登記の申請を受理して差し支えない。 (平10.11.26、民三第2,275号民事局第三課長通知・先例集追Ⅸ162頁、登研627号201頁、月報55巻4号220頁)
平成28年12月19日最高裁判所大法廷 決定破棄差戻
原審裁判所名 平成27年3月24日 大阪高等裁判所
裁判要旨 共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354<参照:裁判例情報>
以上説示するところに従い,最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は,いずれも変更すべきである。
<従来の判例> 平成16年4月20日最高裁判所第三小法廷 判決
平成15(受)670 所有権移転登記手続等,更正登記手続等請求事件
民集 第214号13頁
判示事項 相続財産である可分債権につき共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合に他の共同相続人が不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることの可否
裁判要旨 共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62575<参照:裁判例情報>
1.法定財産制度
(1)婚姻費用の分担(民法760条) 夫婦は、婚姻共同生活を維持するための費用については、それぞれの資産、収入、その他一切の事情を考慮して分担すべきということです。 婚姻生活における経済的共同性を示すものです。
(2)日常家事債務の連帯責任(民法761条) 夫婦が婚姻共同生活を営むには、食糧や衣服等が必要ですが、これは、通常、第三者と売買契約等を締結して入手します。このような売買代金の支払債務等は、婚姻共同生活を維持するための債務ですから、夫婦が共同責任を負うべきということです。つまり、婚姻共同生活を維持するための費用(婚姻費用)については、夫婦で分担するのですから(民法760条)、婚姻生活から生じる債務(日常家事債務)についての対外的な責任も夫婦の共同責任とされたのです。
(3)夫婦別産制(民法762条1項) 夫婦の一方が婚姻前に取得した財産は、婚姻後もその人のものです。婚姻したというだけで婚姻相手の財産について何らかの権利を取得することはありませn。これと同様に婚姻中に夫婦の一方が名義で取得した財産(たとえば、親からの相続や贈与により取得した財産)は、その人の財産であり、他方がその財産について権利を有するということはありません(民法762条1項)。これが婚姻後の夫婦財産関係の原則です。これを「夫婦別産制」といいます。また、このように婚姻後も夫婦の一方だけが所有する財産のことを特有財産(固有財産)といいます。
1.婚約は、「婚姻の予約」という法律行為(契約)です。 ⇒ 一方的に婚約破棄された場合には、損害賠償・慰謝料の請求の対象となります。
2.内縁関係は、婚姻届を出していないだけで、実質的には婚姻関係と異なりません。 ⇒ 内縁を不当に破棄された場合には、財産分与・慰謝料の請求対象となります。
3.同棲とは、婚姻の意思を持つにいまだ至っていない、あるいは婚姻の意思を持たないで共同生活をしている男女関係をいいます。 ⇒ 同棲相手から一方的に同棲生活を解消されても、慰謝料を請求することはできません。ただし、2人が婚約までしていた場合には、慰謝料等を請求することができる場合もあります。 4.内縁関係は、婚姻意思をもって共同生活を行い、社会的にも夫婦と認められている点で、同棲とは異なります。
1. 事件の概要
(1) 乙、丙及び丁らは、共謀してX会社(原告)から不動産売買代金等の名目で金員をだまし取ろうと企て、平成17年5月24日、丁において、X会社代表者甲に対し、本件土地の所有者であるかのように装い、偽造された本件土地の登記済権利証等を示し、本件土地をX会社に売却する意思を表示するなどして、甲に本件土地の所有権を取得できると誤信させ、X会社をして、本件土地を買い受ける旨の売買契約(本件売買契約)を締結させた上、売買代金7億1250万円を乙の銀行口座に振り込ませて詐取した。 X会社は、本件売買契約に際して、本件土地に自らを債務者とし、B会社を抵当権者とする抵当権を設定した。
(2) X会社は、平成17年5月24日、法務局において、本件売買契約に基づく所有権移転を登記原因として所有権移転登記申請を行い、登録免許税として491万9700円を納付し、さらに、抵当権の設定登記申請を行い、登録免許税として354万8000円を納付した(本件納付)。 登記官は各申請を受けて、本件土地につき所有権移転登記(本件移転登記)及び抵当権設定登記(「本件抵当権登記」。本件移転登記と併せて「本件登記」という。)をした。
(3) X会社は、本件土地の真の所有者から本件移転登記の抹消登記請求等を求める訴えを提起された。 平成19年5月29日、当該請求を認容する判決があり、同判決を登記原因として本件移転登記の抹消登記が同年8月29日になされ、また、平成18年6月8日、抵当権設定契約の解除を登記原因として本件抵当権登記の抹消登記がされた。
(4) X会社は、いわゆる地面師詐欺によって無効な本件売買契約を締結させられて本件納付をしたものであり、①本件納付に係る登録免許税は国税の誤納金であって還付されるべきである、②本件納付により国(被告)に登録免許税相当額の利益が生じ、X会社に同額の損失が生じ、その間に因果関係があることは顕著であって、国の利得には法律上の原因がないから、X会社に不当利得返還請求権が認められるとして、その還付又は返還を求める本件訴えを提起した。
2. 本件判決の要旨
(1) 甲は、乙らの詐欺により丁を本件土地の真の所有者と誤信し、所有権を譲り受けられると誤信して本件売買契約を締結した上、売買代金を支払い、本件土地に抵当権を設定し、本件登記を申請して登録免許税を納付したこと、登記官は、X会社の申請のとおりに本件登記をしたこと、本件登記がされた後、抵当権設定契約の解除により本件抵当権登記の抹消登記手続が行われた上、判決により本件移転登記の抹消登記手続が命じられ、本件移転登記は抹消されたことが認められる。 そうすると、本件登記の申請は、申請の時点で上記事情が形式上明らかであれば、不動産登記法25条4号に該当し、登記官において却下すべきものであったが、形式上適法なものとして登記され、その後に、本件抵当権登記については、抵当権設定契約の解除により、本件移転登記については、判決により抹消登記手続を命じられたことにより、それぞれ抹消登記がされたものにすぎない。
(2) ア X会社は、本件納付をして一旦申請のとおりの形式上有効な本件登記を経由したのであるから、登記による利益を受けたというべきであって、本件納付に係る登録免許税は誤納金に当たるとは認められず、また、X会社は、本件登記に基づく納税義務に従って本件納付をしたものであるから、国に対する不当利得返還請求権も成立しない。 イ X会社は、物権的にも債権的にも登記請求権を有していない場合には登記自体が無効であり、登記が有効要件を欠いていたため抹消された場合、登記は遡って無効となり、登記等に伴う利益を受けておらず課税要件も充足されていなかったことになるから、登録免許税は誤納金となり、納税者は、その還付を求めることができると主張するが、登録免許税は、現に登記等を受けるという行為に対して画一的に課されるものと解されるから、主張は採用できない。 また、X会社は、一過性の事実として登記を経由したことを課税の対象と捉えることは、犯罪行為に加担、正当化する面も有するものであって正義公平に反すると主張するが、登録免許税は、登記等のそもそもの原因の性質を問わず、登記等があれば成立するものであり、中立的なものであって、主張は採用できない。
(3) 以上によれば、本件納付による誤納金は存在せず、X会社の還付請求又は不当利得返還請求は、いずれも理由がない。 ( 平成22年12月22日名古屋地方裁判所判決(確定))
3. 本件判決に対するコメント
(1) 本件判決について
ア 本件納付は「過誤納金」に当たらないから、X会社の還付請求又は不当利得返還請求には理由がない、とした本件判決の判断は、正当なものといえる。
イ 本件のような場合には、国に対して登録免許税の還付を求めることはできないことを考慮し、不法行為を行った相手方に対して損害賠償を求めることが、適切な対応ということができる。
過日父が亡くなり、母、私、姉が相続人です。相続財産は土地と預貯金ですが、遺産はすべて母に相続させる旨の公正証書遺言がなされていました。相続人全員の話合いの末、私が土地、母が預貯金をそれぞれ相続することになりましたが、遺言と異なる内容の遺産分割を行いたいとき、どのようにすればいいのでしょうかという、依頼があります。 このような場合、本来であれば、遺言は遺言者の死亡時から効力を生じます(民法985条1項)ので、相続財産の帰属に関する有効な遺言が存在するときは、その遺言内容に従って相続財産の帰属が定まることになります。 相続財産の帰属に関する遺言には、遺贈や遺産分割方法の指定など異なる内容の遺産分割を成立させる意思を有している場合であっても、遺言執行者がいるときに、遺言執行の参加ないし同意なしに遺産分割協議を成立させられるかが問題となります。
遺言内容と異なる遺産分割協議書を作成する上では、遺言の存在とその内容を認識していることを明らかにするべきであるといえます。そもそも、遺言の存在を知らない相続人が一人でも存在するときは、たとえ遺産分割の内容自体について全相続人の間で協議が整ったとしても、遺言内容と異なる遺産分割をするとの点についての合意が成立しているとはいえません。仮に、遺産分割協議書に署名捺印がなされたとしても、遺言の存在を知らない相続人がおり、その者が遺言の存在や内容 を知っていたならば遺産分割協議書の内容に同意しなかったであろうと認められる場合には、錯誤による意思表示であると評価され、その遺産分割協議は無効であると解されます。 それゆえ、「相続させる」 旨の遺言がなされたときなど、遺産分割方法の指定がなされたときは、遺産分割協議書の中に、遺言の存在とその内容を明記したうえで、相続人全員の総意でその内容と異なる遺産分割を行う旨を明らかにすべきです。また、特定の相続人に対して特定遺贈がなされた場合には、当該相続人が遺贈の放棄をする旨を明記すべきであり、そのことによって、遺言の存在とその内容を認識していることが明らかにされるといえます。 このような記載をすることにより、遺言内容を知っていたならば遺産分割協議に応諾しなかったから遺産分割協議は錯誤により無効であるとの主張が後日なされることを封じることになり、紛争防止に役立ちます。
抵当権登記抹消手続を遺漏し、そのまま会社清算結了した場合に、当時の清算人を代表者として右の抵当権抹消登記申請があった場合、受理できるかどうかという疑問がありますが、抵当権登記抹消手続を遺漏し、そのまま会社清算結了した場合に、当時の清算人を代表者としてこの抵当権抹消登記申請があった場合、受理できるとされています。また、右抵当権者が登記上の利害関係人となった場合の承諾書に添付する印鑑証明書は、清算人個人の印鑑証明書でよいとのことです(昭和28、3、16民事甲383号民事局長通達参照、登記研究151号))。
法人名義の抵当権設定登記が残っていて、当該法人の清算結了前に債権及び抵当権が消滅している場合には、清算結了登記後においても清算人より抵当権抹消登記を申請できるかどうかという疑問がありますが、法人の清算結了前に債権及び抵当権は消滅しているが、抵当権の登記については、清算結了後にもその抹消登記が未了である場合は、旧清算人から便宜抵当権抹消登記を申請することができるとされています(登記研究23号)。
被相続人甲は、公正証書遺言で『妻乙にすべての財産を相続させる』という遺言を残していたが、相続人である妻乙、長男A、長女B、二女Cは甲の相続財産について、全員の協議で「長男Aがすべてを相続する」という分割協議が成立した場合、 どのような登記を申請するすることができるのでしょうか?
(1)被相続人甲の死亡の記載のある戸籍(除籍)事項証明書 (2)被相続人甲に除かれた住民票 (3)相続人乙の住民票 (4)公正証書遺言 と、比較的に簡単に相続登記申請を行うことが出来ます。また、遺言者の意思を尊重するためにも遺言内容を登記内容とすべきであると考えます。なぜなら、遺言は死亡と同時に何の障害もなく実行されなければならないという物権変動の原理があるからです。 しかしながら、遺言者の意思どおりではなく、受遺者も含めて、相続人全員がこの公正証書の内容を踏まえて、相続財産についてあらたに遺産分割の協議をすることも許されています。
(1)被相続人の出生から死亡に至るまでの除籍、改製原戸籍、戸籍謄本(戸籍事項証明書) (2)被相続人甲に除かれた住民票 (3)相続人乙の住民票 (4)遺産分割協議書 (5)印鑑証明書(3か月以内でなくても登記申請は可能ですが、金融機関の相続手続きには3~6か月以内というように有効期限があります。)
多数の不動産を所有していた被相続人に関する相続登記は、相続人においてその所有する不動産が把握できないのが悩みです。 市区町村長において、名寄せを取得して、物件の確定を専門家はするのですが、公衆用道路は固定資産税が課税されないため、相続人はその相続手続きを遺漏してしまうことがあります。 当事務所では、あらたに不動産(財産)が発見された場合に、再び遺産分割協議書を作成しないでいいように遺産分割協議書を作成しております。
検認を経ていない自筆証書の遺言書を相続を証する書面として申請書に添付した相続による所有権移転の登記の申請は、不動産登記法第49条第8号の規定により却下することが相当である。 (平7.12.4、民三第4,344号民事局第三課長通知・先例集追Ⅷ698頁、登研585号133頁、月報51巻5号250頁)
家庭裁判所の検認手続を経ていない自筆遺言書に基づき相続による所有権移転登記の申請をする場合、申請書に当該遺言書は被相続人の自筆遺言書である旨の相続人全員が署名捺印した上申書(印鑑証明書付)を添付しても、当該遺言書が自筆遺言書であるか否か確認できないので、当該登記申請は受理できない。 ⇒ 検認手続を経ていなければ、自筆遺言書と認定できない。(登研480号)
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡していたときの遺言の効力について 甲が、乙・丙(夫婦)に、A土地の所有権を2分の1あて遺贈する旨の遺言書を残して死亡しましたが、甲の死亡前に受遺者の一方の乙が死亡していた場合、民法994条1項により、乙について遺贈の効力が生じないこと、また、代襲遺贈も認められないことから、受遺者の他方である丙がA土地につき2分の1のみ所有権を取得します。(登記研究414号)
行方は分からないけれど、生存していることが明らかな場合、また、失踪宣告の要件(普通失踪で7年間)を満たしていない時には、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てることも司法書士はできます。不在者財産管理人が選任されたら、その管理人と遺産分割協議をすることになります。 しかし、不在者が生死不明であり、失踪宣告の要件(普通失踪で7年間)を満たしているときには、失踪宣告を選択するのが普通だと思われます。仮に、不在者財産管理人を選任したとしても、最終的には失踪宣告の申し立てをする必要があるからです。 司法書士は家庭裁判所への失踪宣告の申立書の作成のみならず、ご依頼により申し立ての添付書類である行方不明者(不在者)の戸籍謄本、戸籍付票を取り寄せることができます。また、家庭裁判所による失踪宣告により、不在者が死亡されたとみなされた場合、その後の遺産分割協議書の作成や各種相続財産の名義変更手続きも司法書士が行うことができますので、不在者の生死が不明の場合はお気軽にご相談ください。
不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき,①その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪),又は②戦争,船舶の沈没,震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は,③家庭裁判所は,利害関係人の申立てにより,失踪宣告をすることができます。 失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。また,仮に不在者が婚姻をしていれば,死亡とみなされることにより,婚姻関係が解消します。 なお, 行方不明の配偶者と離婚したい場合は,配偶者を死亡したものとみなすのではなく,行方不明の配偶者を被告とする離婚訴訟の手続を利用する必要があります。 以下は横浜家庭裁判所の場合です。
利害関係人(不在者の配偶者,相続人にあたる者,財産管理人,受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)
不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所
•収入印紙800円分 •連絡用の郵便切手 500円×2枚,82円×15枚,52円×1枚,20円×10枚,10円×10枚 合計2,582円
•官報公告料4298円(失踪に関する届出の催告2725円及び失踪宣告1573円の合計額。
裁判所の指示があってから納めてください。)
(1) 家事審判申立書(失踪宣告)
(2) 標準的な申立添付書類
•不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
•不在者の戸籍附票
•失踪を証する資料
•申立人の利害関係を証する資料
(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))
(1) 失踪宣告の申立をした後は,どのような手続が行われるのか。
↓ 家庭裁判所調査官による調査
(多くの場合,申立人や不在者の親族などに対し)が行われます。
(2) 公示催告
↓
家庭裁判所による公告(官報や裁判所の掲示板で催告)
裁判所が定めた期間内(3か月以上。危難失踪の場合は1か月以上)に,
①不在者について失踪の宣告の申立てがあったこと,
②不在者は、一定の期間までに生存の届出をするように,
③不在者の生存を知っている人は,一定の期間までにその届出をするように
④その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。
(3) 家庭裁判所による失踪の宣告
↓
前記(2)の公告期間が満了した場合,家庭裁判所は失踪宣告をします。 失踪宣告の審判が確定したときは,裁判所書記官は遅滞なくその旨を公告し,失踪者の本籍地の市町村長に対して通知します。
(4) 失踪宣告後の戸籍の届出
↓
①申立人には,戸籍法による届出義務があります。 審判が確定してから10日以内に,市区町村役場に失踪の届出をし
なければなりません。
②届出には,審判書謄本と確定証明書が必要になります。
③審判をした家庭裁判所に確定証明書の交付の申請をします。
④確定証明書は,家庭裁判所に備付けの申請用紙がありますので,
申請用紙に必要事項を記入し,150円分の収入印紙,郵送の場合には
返信用の切手を添えて,審判をした家庭裁判所に申請してください。
下記の図のような相続関係において、同居していない被相続人の前婚の子供XYにも相続権があるのでしょうかという相談があります。
「はい、現在同居されていない前の奥様との間の子供XYにも相続権があります。」と言う回答ができます。法定相続分は、乙が1/2、XY丙がそれぞれ1/2×1/3=1/6となります。遺言書がない場合、残念ながらと言うしかないのですが、民法は、被相続人の子(離婚した前婚の子や死亡した前妻(配偶者)との間との子供)はいずれも相続人になると規定しています。
【図】
(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、注)嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。 【民法の改正の概要】
注)平成25年12月4日、「民法の一部を改正する法律」が成立し、第4号但し書きの前半部(「摘出でない…2分の1とし」の部分)は削除されました。
相続順位 | 血縁相続人 | 血縁相続人の相続分 | 配偶者の相続分 |
第一位 | 子 | 1/2 | 1/2 |
第二位 | 直系尊属 | 1/3 | 2/3 |
第三位 | 兄弟姉妹 | 1/4 | 3/4 |
遺言書がある場合、相続手続きは遺言の内容によって遂行することになりますが、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認の手続きをします。 また、自筆証書遺言の場合、遺言執行者の指定がなければ、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てを行います。遺言執行者の指定がなくても、相続登記手続きはできますが、遺留分減殺請求が行使されることが予想される場合もありますので、金融資産がある場合は、金融機関から遺言執行者の選任の申立てをお願いされることがあります。相続人間で争いが一切予想されないときは、遺言執行者の選任申立てをする必要がないという意見もあります。必要に応じて、対応しましょう。 公正証書遺言である場合は、家庭裁判所で検認の手続きは不要です。
Q 家庭裁判所での遺産分割の審判書によると、調停の途中で相続人である被相続人の兄弟相続人9人(相手方)中の3人が被相続人の配偶者(申立人)に相続分を譲渡したため、調停の手続きから排除するとの決定が出ておりました。審判書の相手方は残りの6人の相続人となっていました。 このような審判書での相続登記の依頼を受けた場合、登記申請の登記原因証明情報として、何を添付すればよいか?という疑問をお持ちになったことがあると思います。
A 相続分の譲渡の性質、方式等について 相続分の譲渡とは、積極財産はもとより消極財産をも含む包括的な遺産全体に対して共同相続人の一人が有する包括的持分権ないし相続人たる地位を譲渡することであり、相続分の譲渡があったときは、譲渡人が有する一切の権利義務が包括的に譲受人に移るとされています(最高裁判所判例解説50年度・510 ページ、民法905条参照)。
また、「相続分の譲渡」とは、積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分(包括的持分)の移転をいいます(参照:最三小判平成13年7月10日(民集55巻5号955ページ))。よって、共同相続人の一人への譲渡は、「相続放棄」や「遺産分割」に類似する機能が生まれるのです。
また、相続分の譲渡は民法905条1項に「共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは」と規定されているとおり、遺産分割前に限ってすることができます。これは、遺産分割により相続財産の帰属が確定した後は、そもそも相続分という概念がなくなるからだと考えられます。なお、同条は「第三者に譲り渡したとき」とされていますが、この第三者には共同相続人以外の者に限らず、共同相続人であってもよい(中川淳「相続法逐条解説上」277ページ以下)とされています。
登記手続については、相続分の譲渡が行われる場合として、共同相続人に対して行われる場合と、共同相続人以外の第三者に対して行われる場合があります。また、譲渡のタイミングとして、いまだ共同相続の登記がされていない聞にされる場合と、共同相続の登記後にされる場合とが考えられますが、共同相続人以外の第三者に相続分の譲渡をした場合は、いったん共同相続の登記を経由した上でないと、譲受人名義の登記をすることができないとされています(登記研究728号、登記研究491号107ページ)。
そして、共同相続人が共同相続登記がされる前に相続分の譲渡を受け、遺産分割協議の結果その不動産を相続したときは、譲受人は「相続」を原因として直接自己名義に相続登記を申請することができるとされています(昭和59年10月15日民三第5195号民事局第三課長回答・先例集追Ⅶ449頁、登研444号99頁))。
また、共同相続登記後にする相続分の譲渡に係るは、「相続分の売買」「相続分の贈与」を登記原因として登記の申請をすることができるとされています(登記研究506号148ページ)。 ところで、相続分の譲渡は、口頭でも可能な不要式行為でありますが、相続分の譲渡に基づく登記を申請する場合は、不動産登記手続が書面主義を採用していることから、共同相続人間で相続分の譲渡が行われた場合において、相続を原因とする所有権移転登記をするときは、登記申請書に相続を証する書面の一部として相続分譲渡証明書を添付しなければなりません。この場合において、譲渡人が作成した相続分譲渡証明書が私署証書であるときは、譲渡人が作成した信ぴょう性及びその法律行為が有効に成立していることを担保するために、作成者である譲渡人の印鑑証明書の添付を必要としています。 相続分譲渡に関する遺産分割調停調書を添付した相続による所有権移転登記申請については、「家事調停において遺産分割協議をした子の一人が『その相続分を他の相続人に譲渡し、その共有者であることを認める』旨の記載のある調停調書を添付して、この子を除いた他の共同相続人に直ちに相続による所有権移転の登記をすることができる」(昭和40年12月7日民甲第3320号民事局長回答)としています。これは、その相続分の譲渡が遺産分割調停という公的手続の中で行われており、その合意が常にすべて無効となるものではなく、それ自身が内容を裁判所書記官という権限のある者が証明していることから、その書面の信ぴょう性及び法律行為の有効性の担保が十分であるから、何ら問題はないと言えます。 本件は、「相続人である被相続人の兄弟相続人9人(相手方)中の3人が被相続人の配偶者(申立人)に相続分を譲渡したため、調停の手続きから排除する」という遺産分割調停審判書が添付されていますので、この登記申請の登記原因証明情報は審判書及び確定証明書のみでよいと考えます。
自筆証書遺言の検認申立てを行い、合わせて、遺言執行者の選任申立てをし、遺言執行者が選任されました。 兄弟相続人4名に等分に分割するという遺言の内容でした。ところが相続人4名のうち1名の住民票を見ると、平成28年6月30日海外転出につき消除されておりました。
当然、海外の居住地は記載されておりません。除票地に郵便を送付しても返送されました。 預貯金は4等分し、3名には分割でき、送金もできるのですが、残余の金員はどうしたらよいのかということになりました。
考え方として、①弁済供託可能か、債権者不確知を理由とするのか、 受領不能を理由とするのか ②不在者財産管理人の選任が必要になるのか という疑問が生じるところですが、
遺言執行者の業務として、 1:遺言執行者に就任したことを知らせる「就任通知書」の作成 2:相続人全員の戸籍等の収集(相続人の確定) 3:相続財産の目録の作成(民法第1011条)があり、遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない、ということですので、終了報告の際に、1名の方は供託しましたということよりも、日本在住の兄弟の相続人に海外居住の兄弟の所在を聞くということも必要だと考えます。
兄弟が疎遠で何も知らないということになれば、遺言執行者が供託者となり、弁済供託の受領不能(賃貸人の所在不明の場合の供託)を理由に供託できます。債権者不確知(賃貸人が死亡し,その相続人が不明の場合の供託)には該当しません。不在者財産管理人を選任する必要はないと言えます。
法務省・供託書等の記載例
1.法定相続人は妹Aと死亡した妹Cの甥Bの2人です。今般、遺言者甲は、A1人に全部を相続させるという遺言をしたいという相談です。
2.Bに一切負担をかけないで遺言書の作成はできるのでしょうか?
①公正証書遺言とは、ご本人の意思で作成する遺言ですから、Bに一切関係なく、知らせることもなく作成することができます
②公正証書遺言を作成し、かつ、遺言執行者を法的専門家である司法書士・行政書士に指定されていると、甲が死亡し、相続が発生した時には、すべてその遺言執行者が遺言の内容を執行してくれるので、Aの事務負担は一切ありません。執行費用は別途発生します。相続財産の○○%とか。
③公正証書遺言を作成するときに必要な書類は、
【1】 遺言者の戸籍謄本と印鑑登録証明書(3か月以内)
※ 印鑑登録証明書に換えて運転免許証、住民基本台帳カード(顔写真付き)でも可
【2】 財産をもらう人の書類 財産をもらう人が相続人の場合は、遺言者との関係がわかる戸籍謄本(遺言者の戸籍謄本に記載されている場合は不要) 財産をもらう人が相続人でない場合(友人など)は、住民票
【3】 財産のなかに不動産がある場合
(1) 土地・建物の登記事項証明書(法務局で交付)又は全部事項情報(民事法務協会の登記情報提供サービス) (2) 固定資産税の納税通知書(毎年4月頃に自宅に届くもの)
または、固定資産評価証明書(市役所、都税事務所で交付)
【4】 貯金、動産、有価証券等 預金、株券等について、個別に記載する場合は、通帳等のコピー
【5】 立会証人2名の住民票 各1通 (自動車運転免許証、保険証のコピーでも可)
注) 次の人は証人になれません。
・ 推定相続人(第一順位の相続人等)及びその配偶者並びに直系血族
・ 受遺者(受遺者とは、相続人以外の人で遺贈を受ける人のことです。)及びその配偶者並びに直系血族 ・ 未成年者
当事務所にて証人の立会はできますので、お申し付けください。
■ 遺言(公正証書)を作成する場合の司法書士の手数料
□□ 遺言書作成報酬 70,000円~
☆遺言により、相続させ又は遺贈する財産の価額や内容により変動があります。
□□ 遺言書作成立会証人(2人) 30,000円
☆場所により、交通費及び日当が別途かかります。
□□本人との事前面接出張費用(半日) 30,000円
■ 公証人費用 (目的財産の価額)
(手数料の額) 5,000万円まで 29,000円
このほかに公正証書正本・謄本の作成手数料が4,000円程度かかるとみて下さい。
遺産分割協議書へは、相続人全員が署名および実印による押印をし、印鑑証明書を添付します。
しかし、相続人が海外に住んでいて印鑑証明書の交付を受けられない場合、印鑑証明書の代わりにサイン証明(署名証明)を利用することになります。
サイン証明とは、海外在留で日本には住民登録をしていない方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。 具体的な手続としては、遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押捺し、遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割り印をします(奥書認証)。
なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前で行う必要がありますから、事前に署名をせずに持参しなくてはなりません。 サイン証明には、上記と合わせて2種類の方法があります。
1. 持参書類(遺産分割協議書)とサイン証明を綴り合わせて割印し、一体の書類としたものに奥書認証するもの
2. 申請者の署名を単独で証明するもの(サイン証明のみを単独で発行) 登記申請に使う場合は、原則として1の方法によるサイン証明を使用します。
サイン証明の例
その他、サイン証明(署名証明)については、外務省の各種証明・申請手続きガイドも参考にしてください。
被相続人の兄弟姉妹が相続人となるのは次の場合です。 1.被相続人に子(または、その代襲相続人)がおらず、直系尊属(父母、祖父母)が全員亡くなっているとき。 2.被相続人に子(または、その代襲相続人)や、存命の直系尊属がいるが、その全員が相続放棄をしたとき。 兄弟姉妹が相続人となる場合で、相続放棄できる期間は次のとおりです。 上記1の場合には相続開始(被相続人の死亡)と同時に、兄弟姉妹が相続人となりますから、相続の開始を知ったときから3か月間です。相続の開始を知った時とは、被相続人の死亡の事実を知った時ですから、亡くなったことを知らなかった場合には、知った時から3か月間だということです。 2の場合には、先順位の相続人がすべて相続放棄をしたことにより、自分が相続人となったことを知ったときから3か月間です。自分が相続人となったことを知った時とは、先順位の相続人がすべて相続放棄をしたことを知った時です。 したがって、先順位の相続人全員が相続放棄をしていても、そのことを知らせてくれていなかったような場合には、その事実を知った時から3か月間であれば相続放棄ができることになります。 いずれの場合であっても、知った時から3か月というのは、亡くなったこと、先順位者全員が相続放棄したことといった「事実を知った時」を指しています。 上記のような事実は知っていたけれども、自分が法定相続人に当たるとは知らないでいるうちに3か月間が過ぎてしまったらどうでしょうか。この場合、3か月経過後に自分が相続人であることを知ったとしても、もはや相続放棄をすることはできません。 なお、被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっているときには、その兄弟姉妹に子がいるときには代襲相続が生じます。したがって、被相続人の甥っ子、姪っ子が相続人になることもあります。
家庭裁判所へ相続放棄の申立が出来るのは、現実に相続人になってからです。たとえば、被相続人の父母と兄弟姉妹が同時に相続放棄の申立をすることはできません。兄弟姉妹が相続人になるのは、直系尊属(父母、祖父母)が全員相続放棄したときだからです。 そのため、兄弟姉妹が相続放棄をするときには、被相続人の子(および、その代襲者)のすべて、および存命である直系尊属の有無を明らかにしなけれなばりません。少なくとも、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍、原戸籍)のすべてを取得しなければなりませんし、他にも多数の戸籍等が必要となる場合が多いです。 被相続人の兄弟姉妹が、自分自身でそのような戸籍等を集めるのは困難となることでしょう。
甲が死亡して乙が相続人となったが、三か月以内の承認又は放棄の熟慮期間内に乙が選択権を行使することなく死亡し、丙が乙の相続人となったような場合を「再転相続」という。
この場合、丙は乙の死亡による自己の相続について承認又は放棄の選択権があるだけでなく、甲死亡による乙の相続について承認又は放棄の選択権も持っていることになる。
代襲相続の場合は、甲→(乙)→丙、のように乙が甲より先に死亡しているため、丙が乙の地位に上がって甲を相続することになり、相続は一つであるが、再転相続の場合は、甲⇒乙、乙⇒丙と二つの相続が順次開始している。
また、再転相続の場合の熟慮期間は、丙が自己のために乙の相続が開始したことを知った時から三か月以内と定められている(民法第916条)。
※甲が死亡して、その相続人である乙が甲の相続につき承認又は放棄をしないで死亡し、丙が乙の法定相続人となった、いわゆる再転相続の場合には、丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かっ、甲の相続につき放棄をしても、それによっては乙の相続いわゆる再転につき承認又は放棄をするのになんら障害にならない。
また、その後に丙が乙の相続につき放棄しても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはない(最判昭63.6.21判決)。
第1の相続 (被相続人甲) |
第2の相続 (被相続人乙) |
丙の選択 の可否 |
||
1 | 承認 | 承認 | 可能 | 丙は甲と乙の遺産を承継 |
2 | 放棄 | 承認 | 可能 | 丙は乙の遺産のみを承継 |
3 | 放棄 | 放棄 | 可能 | 丙の次順位の相続人が甲、乙の遺産を承継 |
4 | 承認 | 放棄 | 不可(※) | 甲の遺産は、丙の次順位の相続人が継承 |
※ 丙が第2の相続を放棄した場合は、第1の相続を承認又は放棄することはできない。第2の相続を放棄した丙は、この放棄によって第1の相続の選択権も相続しなかったことになるからである(最判昭63. 6. 2 1判決)。
被相続人Aの相続につき、代襲相続人Dが熟慮期間中に、相続の承認又は放棄を行わないまま死亡したため、Dの相続人EがAを被相続人とする相続(第1相続)とDを被相続人とする相続(第2相続)の双方を相続(再転相続)した。 再転相続人であるEが先に第2相続を放棄した場合、第1相続について承認又は放棄することができるのか。 その場合に第1相続について他の相続人Bは全部相続取得できるのか、AもDも遺言はありません。
再転相続人であるEが、第1相続に関する相続選択権を行使することなく、先に第2相続について放棄をした場合は、それによってEはDが有していた第1相続に関する相続選択権を失うこととなり、第1相続については、Eが承認又は放棄することはもはやできない。
しかし、Eが第1相続の相続分がなくなるわけではなく、依然として、DはAの相続人であることに変わりなく、その相続分はDに帰属する。
したがって、第1相続についてのDの相続分は、Eが相続選択権を失ったため、Eの次順位の相続人に帰属し、当該相続人がいなければDについて相続人不存在の手続を行うこととなる(注1)。
この場合、第1相続の他の相続人Bは、第2相続の次順位相続人ではないので、第1相続についてのDの相続分を相続取得することはできない。
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1. 申述人
相続人(相続人が未成年者または成年被後見人である場合には,その法定代理人が代理して申述します。)
未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには,当該未成年者について特別代理人の選任が必要です。
2. 申述期間
申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。
3. 申述先 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
4. 申述に必要な費用
• 収入印紙800円分(申述人1人につき)
• 連絡用の郵便切手(84円×5枚,10円×5枚 合計470円)
5. 申述に必要な書類
(1) 相続放棄の申述書
(2) 標準的な申立添付書類
※ 同じ書類は1通で足ります。
※ 戸籍等の謄本は,戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。
※ もし,申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申述後に追加提出することでも差し支えありません。
※ 必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。
1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
【申述人が,被相続人の配偶者の場合】
3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】
3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
4. 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
5. 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. その他
相続人が,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお,相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には,相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより,家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。
7. 手続の内容に関する説明
Q1. 夫は数年前に死亡しているのですが,相続放棄の申述をすることはできるのですか。
A. 相続放棄の申述は,相続人が相続開始の原因たる事実(被相続人が亡くなったこと)及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に行わなければなりません。ただし,相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。
Q2. 受理されたときは,どのような手続をすればよいのですか。
A. 亡くなった人の財産を管理している場合は,相続人に引き継ぐことになります。また,債権者から債務の請求をされている場合には,債権者に対して,家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよいかと思われます。
Q3.
相続放棄が受理された証明書がほしいのですが,どのように申請するのですか。
A. 家庭裁判所に備付けの申請用紙がありますので,申請用紙に必要事項を記入し,1件につき150円分の収入印紙,郵送の場合は返信用の切手を添えて,受理をした家庭裁判所に申請してください。直接,受理した家庭裁判所まで申請にいらっしゃるときは,印鑑及び受理通知書や運転免許証などの本人を確認することができるものを持参してください。
お墓(墓地、墓石)は相続財産(遺産)に含まれません。お墓などの祭祀財産(さいしざいさん)は、相続とは関係なく祭祀を主宰すべき者(祭祀承継者)が承継するものとされています。
祭祀財産とは、祖先を祭るために使用される家系図、位牌、仏壇、墓碑、墓地などをいいます。祭祀財産は相続財産に含まれないのですから、被相続人が指定すれば、内縁の妻など法定相続人でない人が引き継ぐこともできます。 また、相続放棄をした場合であっても、祭祀財産を引き継ぐことはまったく問題ありません。
お墓、位牌、仏壇などの祭祀財産を誰が引き継ぐかについては、民法897条で定められています。
(相続の一般的効力)
民法第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 (祭祀に関する権利の承継)
民法第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。 「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条)」ことの例外として、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するわけです。
系譜、祭具及び墳墓などを、祭祀財産といいます。祭祀財産に含まれるのは、祖先を祭るために使用される家系図、位牌、仏壇、墓碑、墓地などです。これらの祭祀財産は遺産に含まれず、祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀承継者)が承継します。
祭祀承継者が誰であるかは慣習にしたがいます。ただし、被相続人の指定がある場合には、指定された人が祭祀承継者となります。被相続人による祭祀承継者の指定は、遺言によることも出来ますが、とくに方法が決められているわけではありません。たとえば、被相続人が口頭で指定したのであっても有効です。
被相続人が祭祀承継者を指定しておらず、かつ、慣習が明らかでないときであって、利害関係人間に争いがある場合には、家庭裁判所が定めます(祭祀財産承継者の指定の調停申立)。
祭祀財産は相続財産(遺産)ではないわけですから、祭祀承継者が相続人であるかどうかは関係がありません。したがって、被相続人の指定によれば、相続権を持たない内縁の妻が祭祀承継者になることもできます。また、相続人が相続放棄をした場合であっても、祭祀承継者となることは何ら差し支えありません。
遺骨
遺骨は、慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属する(最高裁平成1年7月18日判決)とされています。
なお、人が他人の所有物となることはありませんから、遺骨が所有権の対象となるのかが疑問となります。判例では、遺骨については、埋葬・管理・祭祀・供養の範囲で所有権の客体となると判断されています。
墓地 墳墓(墓石)だけでなく、墓地も祭祀財産に含まれます。ただし、墳墓と社会通念上一体の物ととらえてよい程度に密接不可分の関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地に限られます。
1.被相続人甲(妻は既に死亡)と実子の長女Aの配偶者Bとは、平成24年1月15日に養子縁組をした。AとBとの間には平成22年に生まれた嫡出子Cがいる。Bが平成26年8月23日に死亡し、被相続人甲が平成27年12月24日に死亡した。CはBを代襲して甲の相続人になれるか。 本件の場合、Cは、Bが甲の養子になる前の子であるが、実子であるAの子であるから甲の直系卑属(甲の孫になる)に該当する。 したがって、CはBを代襲して甲の相続人になれるということである(登記研究446号123頁。質疑応答【6533】)。
養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得します。 これは、法律上、養親子は実の親子と同じ関係となることです。 養子は、相続においても実子と同じですので、相続人にもなりますし、養子縁組後に生まれた子供は、実子の子供と同様に(代襲・数次)相続権があります。 しかし、養子縁組前の養子の子(連れ子)については、注意を要することとなります。 養子縁組前の子には、法律上の親子関係が引き継がれませんので、代襲相続も数次相続においても相続人とはなり得ませんので、ご注意ください。
(1)被代襲者の要件 ① 代襲されるのは、被相続人の子と被相続人の兄弟姉妹のみである。 ② 代襲原因は相続開始以前の死亡、欠格及び廃除の三つに限られる(民法887条2項)。 (2)代襲者の要件 ① 被代襲者の直系卑属であること(民法887条3項、889条2項は887条3項を準用していないので、兄弟姉妹については、その子一代に限って代襲相続人となることができる。)。 ② 被相続人の直系卑属(子の代襲の場合)であること、又は傍系卑属(兄弟姉妹の代襲の場合)であること(民法887条2項、889条2項)。 ③ 相続開始時に直系卑属であること。 ④ 被相続人から廃除された者又は欠格者でないこと。 以上が代襲相続の要件である。