租税特別措置法第84条の2の3第1項の規定の施行等に伴う不動産登記事務 の取扱いについて(通知)
〔平成30年3月31日付法務省民二第168号〕 法務省民事局民事第二課長
所得税法等の一部を改正する法律(平成30年法律第7号。以下「改正法J という。)が本年4月1日から施行され,改正法により新設される租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「法」という。)第84条の2の3第1項の規定も同日から施行されますが,これに伴う不動産登記事務の取扱いについては,下記の事項に留意するよう,貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
記
第 1 背景
相続登記が未了のまま放置されることは,いわゆる所有者不明土地問題を生じさせる大きな要因の一つであるとされ,法務省では,相続登記を促す広報用リ-フレットの作成や法定相続情報証明制度の創設など,相続登記の促進のための各種の施策を進めているところである 。
一方で,相続登記が未了のまま放置されることの理由の一つとしては,手続にかかる費用の負担が挙げられており,例えば登録免許税の減免措置といった費用負担の軽減を図るべきとの指摘もある 。
法務省では,これらの状況に鑑み,平成30年度税制改正要望として,相続登記を促進するために,相続登記に係る登録免許税について特例措置を設けることを要望してきたところである 。 この要望については,平成29年12月22日に閣議決定された平成30年度税制改正の大綱に「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」として盛り込まれ,今般の免税措置の創設に至ったものである 。
第 2 相続に係る所有権の移転登記の免税措置(法第84条の2の3第1項関係)
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下同じ。)により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは,平成30年4月1日から平成33年3月31日までの聞に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については,登録免許税を課さないこととされた(法第84条の2の3第1項)。
今回の措置は,いわゆる数次相続が生じていることを主に想定したものであるが,ここでいう「個人が相続により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したとき」とは,登記名義人である被相続人 A から相続人 B が 相続により土地の所有権を取得した場合において,相続人 B が被相続人 A からの相続による土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときをいう。 したがって,当該土地の所有権が相続人 B の死亡による相続を原因として B の相続人(例えば B の子など)に更に移転していることまでを要件とするものではない。すなわち,例えば,当該土地について相続人 B が生存 している聞に相続人 B から第三者に売買等がされていたとしても,それをもって法第84条の2の3第1項の適用外となるものではない 。
「当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」とは,死亡した相続人 B を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける,被相続人 A からの相続による土地の所有権の移転の登記をいう。 また,例えば,相続人 B に,存命する同順位の相続人が存在し,当該土地が当該同順位の相続人と相続人 B との共有により相続されている場合には,「 当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」として法第84条の2の3第1項の適用により免税措置を受ける範囲は,相続人 B が所有権の移転を受ける持分に相当する部分となる。
法第84条の2の3第1項の適用を受けようとするときの申請情報の記載は,例えば,登録免許税の欄に「租税特別措置法(又は昭和32年法律第26号)第84条の2の3第1項により非課税(あるいは,一部非課税)」などとする。
上記3に従って法第84条の2の3第1項の適用を受けようとする土地の相続による所有権の移転の登記の申請があった場合には,同項の適用の有無は,原則として,当該申請において提供される,相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報 ( 不動産登記令(平成16年政令第379号)別表22の項添付情報欄)から明らかとなるため,法第84条の2の3第1項の適用を受けるための特段の証明書類は要しない。