墓地(墳墓地)の相続について
現代のお墓の形式には、永代使用の霊園等が存在するため、また、お骨はお寺で一括してに納骨・合葬されるようになったため、更には、墓地は固定資産税が課せられていないことなどから、土地・建物の相続登記をする際に往々にして、相続登記が申請されないで相続登記の遺漏となるケースが多い。
また、墓地も所有権の登記をしなければならないということが意外にも知られてないことから、相続登記等の承継の登記手続をしなければならないという概念が欠落している場合が多い。
このような現代においても、なおかつ、土地登記簿の表題部の地目に墓地(墳墓地)として、表題部のみが祖々父母の名前のみの記載があることがあります。
この先祖代々からの相続登記等の承継の登記がされていない墓地の登記申請の依頼があった場合、苦労することが多いのは、戸籍の取寄せ、調査だけでも、400人にも上り、関係書類が膨大な量となることが、過去の取り扱った事件の中にはありました。依頼者の方でも登記申請を断念し挫折をされるなど、相変わらず、墓地の相続登記等の承継登記がなされないままの土地(墓地)が存在しているのです。そうこうしているうち、道路拡張等により、その土地(墓地)が官公庁の買収の対象土地となり、嘱託登記に委ねられるまで放置状態が続いているというケースもあります。
私たち専門家でもなかなか手を出したがらない非効率的な仕事でありますが、当事務所は、依頼者の先祖代々の名義を何とか変更してほしいという願いを十分に叶えてあげられる実務経験豊かなベテラン司法書士です。
ところで、墓地の相続等による所有権移転登記手続には、「祭祀物承継」と「相続」の二つの承継が考えられます。
(1)他の不動産と一緒に相続を原因として相続登記をする方法です。⇒この登記の際に『墓地』の相続登記を遺漏してしまうことが多いので、注意を要します。
(2)民法第897条による承継を原因として登記を申請する方法です。
原則として、墓地は祭祀財産であることから、「民法第897条による承継」を登記原因として所有権移転登記申請をすべきであるという見解があります。
しかしながら、他人が墓地として使用している土地を所有している当該墓地の所有者にとっては、当該墓地は、自己の祭祀財産ではないことから、その所有者が死亡した場合、墓地は一般財産と同様に相続の対象(相続財産)となります。
登記手続において、自己の祭祀財産か否かを証明する必要はないので、墳墓地の相続よる所有権移転登記は受理されます(昭和35年5月19日民事甲第1130号民事局長回答)。
実際には祭祀物承継による登記は非常に稀有な登記です。承継を証する書面の添付及び遺贈に準じた登記の申請をすることになります。相続との違いは、単独申請ではなく、「登記原因証明情報=承継を証する書面」が必要になるなどのほか、相続を証する書面の添付は不要ですが、共同申請となるため、遺言執行者が選任されていない場合は、登記権利者が承継者、登記義務者として、相続人全員が義務者となるため、手続きとしての難易度は相続の場合と同様となります。
《民法第897条》
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継 する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
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