財産管理業務とは、司法書士法施行規則第31条第1号(以下、「規則第31条」という)に
「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに
類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又は
これらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務」
と定められている業務であります。
この業務は、他の法律により司法書士が行うことが禁止されていないため、慣習等により
司法書士も行っている業務として「附帯業務」
とも言われています。
もっとも、規則第31条は、
司法書士法人の業務範囲を定めた規定ですが、同条は司法書士法第29条の「法令等に
基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務」
を規定した条文の構造から、もともと司法書士であれば行うことができるとされている
業務ということになります。
この様な他人の事業の経営や他人の財産の管理若しくは処分を行う業務をすることができる旨
を、法令で規定されている職業は、司法書士と弁護士のみとなります。
例えば、相続が発生した場合、相続登記は司法書士の本来業務ですが、被相続人名義に
なっている預貯金や株券等の有価証券の解約、配分、書換えなどの手続きは、相続人が行
うには煩雑で手間がかかります。また相続財産を預かって管理したり処分したりするには専
門的な法律知識と高度な倫理観が求められます。
司法書士は、近年成年後見制度により成年後見人等に就任して第三者の財産管理業務を
実践している実績があり、その信頼性は広く国民に認知されているところです。
司法書士法29条(司法書士法人の業務の範囲)
司法書士法人は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うほか、定款で定め
るところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
一 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務
の全部又は一部
二 簡裁訴訟代理等関係業務
2 簡裁訴訟代理等関係業務は、社員のうちに第三条第二項に規定する司法書士がある司
法書士法人(司法書士会の会員であるものに限る。)に限り、行うことができる。
司法書士法施行規則第31条(司法書士法人の業務の範囲)
司法書士法第29条第1項第1号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに
類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこ
れ らの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委
員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを
行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
三 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の
教 育及び普及の業務
四 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成18年法律第51号)第33条の
2 第1項に規定する特定業務
五 司法書士法第3条第1項第1号から第5号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密
接に関連する業務
具合的な相続財産の承継業務とは
不動産や預貯金、株式などに関する相続による名義変更、解約手続き、生命保険金・給付金請求
ただし、弁護士法第72条との関係から、事件性(紛争性)がないものに限られます。
司法書士は、上記に掲げる司法書士法第29条、及び司法書士法施行規則第31条の規定により
家庭裁判所により選任される相続財産管理人、不在財産管理人、遺言執行業務、31条第1項
第1号において、「当事者その他関係人の依頼」による(=委任契約に基づく)財産管理業務につ
き明記依頼による財産管理業務を行うことができます。
コメントをお書きください